FRに負けない走り。トヨタ新型クラウン進化した電動4WDを解説!

はじめに

新型「クラウン(クロスオーバー)」はトヨタ自動車が2022年9月に発売しました。
この新型「クラウン」は今回の新モデルが(16代目)にあたり、今回発売したモデルは、セダンと多目的スポーツ車(SUV)を融合させた「クラウン(クロスオーバー)」という新しいスタイルになります。

今回は、新型クラウンのパワートレーンと駆動系に着目して、解説していきます。

今までのクラウンとの違いは??

まず、いままでの先代クラウンは、FRベースの車種で前部エンジン・後輪駆動の構成となっていました。

FR(フロントエンジン・後輪駆動:Front engine Rear drive)
「FR」は、車体の前部にあるエンジンから動力を伝えるプロペラシャフトを後方に伸ばし、後輪を駆動します。駆動と操舵を別のタイヤで受け持つため旋回性や前後の重量配分に優れ、クルマの運動性にこだわるスポーツタイプに多い駆動方式といえます。
また、構造上FFと比較すると室内を広くすることが難しくなるため、室内空間が保たれる大型の乗用車への採用が見られます。
https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-construction/subcategory-engine/faq073

引用JAF https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-construction/subcategory-engine/faq073

ですが、今回の新型クラウンのクロスオーバーでは、クラウンとしては初のFF(前部エンジン・前輪駆動)ベースのプラットフォームを採用しつつ、四輪駆動(4WD)化を図り、FRに負けない走りを実現させています。

引用JAF
FF(フロントエンジン・前輪駆動:Front engine Front drive)
「FF」は、車体の前部にあるエンジンで前輪を駆動します。駆動輪(エンジンの動力が伝わるタイヤ)と操舵輪(ハンドル操作で動くタイヤ)が同一で、かつボンネット部分で完結するため、室内が広く作れることが特徴です。
コンパクトカーからミニバンまで広く採用され、現在の主流となっている駆動方式です。
ただし、駆動輪と操舵輪が一緒になるため、FRと比較すると最小回転半径が大きくなる傾向があります。

引用JAF https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-construction/subcategory-engine/faq073

4WD(四輪駆動:4(Four)Wheel Drive)
※メーカーによりAWD(全輪駆動:All Wheel Drive)

4WDは前後4輪を駆動するので、未舗装路や雪道など滑りやすい路面に強いのが特徴です。4WDには「パートタイム4WD」と「フルタイム4WD」があります。パートタイム4WDでは、普段は2輪駆動で走行し、滑りやすい路面では4WDへと切り替えが可能です。一方「フルタイム4WD」は、常時4輪に駆動を伝えています。
FFやFRのクルマでも、同一車種で4WDを選択できる場合がありますが、機構が増える分、値段が高くなり、また重量も増加するため燃費が低下するデメリットがあります。

引用JAF https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-construction/subcategory-engine/faq073

新型クラウンのパワートレインの種類について

今回その新型クラウンのパワートレーンとして用意されたモデルが、

「2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステム」
「2.5Lシリーズパラレルハイブリッドシステム」になります。
それぞれの特徴について解説していきます。

「2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステム」

このモデルの特徴は、前輪を駆動(FFベース)となります。
直列4気筒ガソリンエンジン「T24A-FTS」と、モーターがエンジンをサポートするパラレル方式のハイブリッドシステム「THS II」
そして、後輪を駆動する電動アクスル「eAxle」を組み合わせた形になります。

エンジンは、排気量2.4Lの直列4気筒ガソリンエンジン「T24A-FTS」(最高出力200kW、最大トルク460N・m)が採用されています。
また、「E-Four Advanced(アドバンスド)」と呼ぶ新しい電動4WD方式を採用しており、
ハイブリッドシステムはモーターがエンジンをサポートするパラレル方式となっています。
いわゆるモータの「発電」に加え「駆動」にも使うシリーズがパラレル方式のハイブリッドシステムとなります。

フロントモーターの最高出力は61kW、最大トルク292N・m、および後輪を駆動する電動アクスルリアモーターの最高出力は59kW、最大トルク169N・mとなります。
WLTCモード燃費は1L当たり15.7kmにとどまりますが、システム最高出力は257kWに達しており、アクセル操作においても、ターボエンジンと前後モーターの組み合わせることで、トルクフルでアクセル操作に対する遅れが少ない伸びのある加速を実現しています。

これにより、発進時の押し出し感をさらに引き上げ、旋回時のライントレース性を高速域まで高められるように進化させています。

新型クラウンのE-Fourの最も特徴的な点は、高μ路での発進アシストや、リア駆動を積極的に使うように進化させ、高μ路での低速旋回時のライントレース性が高まった点になります。
例えば、「立体駐車場みたいなところで低速でくねくね曲がりながら走行しているときにリアが押してくれる」ような効果があります。
従来のE-Fourでは低μ路の安定性向上が主目的であり、乾いた舗装路などの高μ路ではリア駆動を使っていなかったので、これは大きく性能が向上しています。

補足 低μ(ミュー)路、高μ(ミュー)路ってなに?

低μ(ミュー)路とは、氷結や雨などによって人工的に作られた滑りやすい路面のことで、ブレーキやトラクション評価などで使用されています。
逆に、高μ(ミュー)路面とは乾燥して乾いた舗装路(アスファルト路面)のことをいいます。
ここでいうミュー(μ)とは、「摩擦係数」の単位になります。
1kgの物を1kgの力で引っ張れるときが「1μ」となります。
これが、雪道だと、0.5~0.35μ。圧雪路で0.35~0.2μ、氷結露で0.2~0.1μと低下します。
フィギュアスケートも氷の上で滑るので、そのイメージですね。
逆に、乾燥したアスファルト路面は0.8μ前後となります。
つまり、高ミュー路面とは乾燥したアスファルト路面のことをいいます。
高μ路でもリア駆動を使うメリットとして、まず発進時においては、リア駆動による押し出し感で車両の加速感を高め、旋回時は前輪主体の駆動で生じやすいアンダーステアを防止することが可能になります。

旋回時においては、駆動力の一部を後輪で受け持てば、前輪の駆動力を減らすことができます。
前輪の駆動力が軽減された分を前輪のグリップ力を旋回のための横力発生に振り分けられることで、回頭性を高めることが可能です。FFベースの車は駆動輪と操舵輪を兼ねているので、結果、速度を上げていくにつれて曲がる力が落ち、外側に膨らむ力が大きくなってしまいますが、新型クラウンのE-FourではこうしたFFベースの車の弱点を見事に補っています。
こうした活用シーンの拡大に加え、より、リア駆動の効果をより実感できるように新型クラウンのE-Fourでは、同社の多目的スポーツ車(SUV)「RAV4」のE-Fourと比べてリアの駆動力配分を倍くらいに高められています
これは、バイポーラ型のニッケル水素電池を採用したことでより大きな出力を出すことにより実現することができました。

また、新型クラウンの最上位グレードに適用される新電動4WDシステム「E-Four Advanced」ではより発熱を抑えるために同モーターの冷却方式には、「水冷」を採用されています。
リアの電動アクスルに搭載するリアモーターの最大トルクは169N・mとE-Fourの約1.4倍となっています。これにより、リア側のトルク配分は最大で8割となっています。

E-Four Advancedは、前後輪のトルク配分を「100:0~20:80」とE-Fourよりも広範囲かつ緻密に制御できる電動4WD方式となります。
リアにも出力やトルクの大きなモーターを搭載することでこのトルク配分が実現されました

従来はアンダーステアになりやすかったシーンでも、後輪のトルク配分を増すことでニュートラルステアにしやすい。
さまざまな路面に対して高いトラクション性能と操縦安定性を確保しやすい車両です。


[Q]アンダーステア、オーバーステアとはどういうことですか?
[A]速度の上昇でクルマが内側に切れ込むステアリング特性をオーバーステアリング、外側に膨らむことをアンダーステアリングという。
• 速度の上昇でクルマが内側に切れ込むステアリング特性をオーバーステアリング、外側に膨らむことをアンダーステアリングという。
• 多くの車が走行安全性を考慮しアンダーステアリングの特性をもつ。
オーバーステアとかアンダーステアという言葉は、本来クルマのステアリング特性を表すものです。一定のハンドル角で大きく旋回しているとき、速度が上昇するに従って、クルマが内側に切れ込んでいってしまうことをオーバーステアリングといいます。一般的には速度の上昇に伴って後輪が横滑りすることから起きる現象で、これをコントロールするには、アクセルを緩めて減速させることが必要です。

引用JAF  https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-drive/subcategory-technique/faq091

「2.5Lシリーズパラレルハイブリッドシステム」モデル

このモデルの特徴も、前輪を駆動(FFベース)となります。
エンジンは、排気量2.5リットル(L)の直列4気筒ガソリンエンジン「A25A-FXS」(最高出力137キロワット=kW、最大トルク221ニュートンメートル=N・m)ハイブリッドシステム「THS II」を搭載しています。
このハイブリッドシステムもパラレル方式のハイブリッドシステムとなります。
フロントモーター(最高出力88kW、最大トルク202N・m)とおよび後輪を駆動するリアモーター(最高出力40kW、最大トルク121N・m)を組み合わせたことにより、
電動4WD方式である、「E-Four(イーフォー)」を適用したものになります。

システム最高出力は172kWとなっており、「2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステム」
と比較すると最後出力という点では劣りますが、
WLTCモード燃費は1L当たり22.4キロメートル(km)となっており、「2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステム」よりも優れた燃費となっています。

この新型クラウン「2.5Lシリーズパラレルハイブリッドシステム」のE-Fourでは、リアモーターの冷却方式は「空冷」となっています。
発熱を考慮すると、リア駆動が使えるシーンは高μ路では車速の低い領域に限定されます。
加えて、リア側のトルク配分は最大で2割となっています。
これは、電池を除くハードウエアが従来のE-Fourと同じでリアモーターの最大トルクは121ニュートンメートル(N・m)とそれほど大きくないのが大きな理由となります。

まとめ

E-Four Advancedリアにも出力やトルクの大きなモーターを搭載することで前後輪のトルク配分を「100:0~20:80」となっていることは非常に驚きました。

FFベースの4WD車にも関わらず、FR車に近いトルク配分になっているのは非常に魅力的に感じます。
筆者は以前BMWのxDriveシステムが採用されたFRベースの4WD車のX3(F型)に以前乗っていました。xDriveでは、電動モーターで制御し、0:100のFR状態から、50:50の完全AWD状態までシームレスに変更されていたので、FR車のそれと違和感がないくらい自然な操縦ができていたことを覚えています。
新型クラウンではFFベースであるにも関わらず、後輪のモーターを活用することでこのトルク配分を実現されていることに驚きました。
一度試乗にいきたいと思います。

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